【登壇報告】AGU環境人文学フォーラム オンライントーク#28

2025年4月19日(土)、AGU環境人文学フォーラム主催の「Online Talk #28」に、PONDALIZEメンバーの木村京子が登壇し、「Pond Time: Landscapes Connected through Art and Culture」と題したトークセッションを行いました。

➡️AGU環境人文学フォーラムWebsiteのイベントページ
https://www.agu-environmental-humanities.com/post/online-talk-28-pond-time-landscapes-connected-through-art-and-culture-―thinking-through-yatsu-nu


🪞谷津沼から見えてくる、風景と記憶の重なり

木村の発表は、埼玉県比企丘陵に点在する「谷津沼」を出発点に、
人と自然の関係性を編み直すアートと文化の実践を紹介するものでした。

谷津沼は、単なる湿地ではありません。
それは、農の知恵、神話、暮らしの記憶、そして地形そのものが交差する、
動的なランドスケープ=記憶の層なのです。

PONDALIZEの取り組みを通じて、木村はこう語りました:

「アートは、沼の“濁り”や“曖昧さ”をそのまま受け止めながら、
感覚と歴史と場所をつなぎなおす力を持っている。」


🎨アートと地域の共鳴実践──比企丘陵での試み

当日は、以下のような多彩な実践例を紹介しました。

  • アーティスト・イン・レジデンス:国内外のアーティストが比企丘陵に滞在し、地域住民との対話や協働を通して、地形や記憶を可視化する作品を制作。
  • 絵画・造形ワークショップ:子どもから大人までが参加し、自らの“沼”を描いたり、立体造形で“見えない風景”を表現する試み。
  • 音楽セッションや即興演奏:地元の自然音や昔話からインスピレーションを得た、土地のリズムを奏でる音の実践
  • 歴史資料の閲覧・聴き取り:比企丘陵における用水・信仰・灌漑の歴史をたどりながら、沼をめぐる地域文化の文脈を掘り起こす
  • 生態系・地形研究との接続:在来植物の分布や沼地の水循環といった視点から、自然環境と文化の交差点を読み解く。

そして、これらの活動をつなぎ直す回路として、
香りのワークショップや感覚アーカイブも展開されています。

アート・音・記憶・身体・環境のすべてが、
“沼”という複雑な地形を通して交差・共鳴していく
それが、PONDALIZEが描く「沼の文化的コモンズ」です。


💬アフタートークから生まれた豊かな対話と連携の芽

講演後のアフタートークでは、さまざまな専門家や参加者から、
地域・歴史・海外研究・若手育成など多方面からの反応が寄せられました。

🪵地形と暮らしをめぐる地域連携の可能性(兵庫)

兵庫県の参加者からは、
地域の貯水池や沼地の変遷と生活文化のつながりに関心を寄せる声が届き、
情報交換と語り直しの場づくりに向けた協力の糸口が生まれました。

📜日本古代文学に見る「沼」の風景

古典文学研究者からは、
『萬葉集』や『能因歌枕』に描かれた沼のイメージ、
「流れぬ水」としての空間性についてのご指摘があり、
古代から現代への風景意識の系譜が語られました。

これを受け、今後のPONDALIZEでは、
現代の沼風景の成立」を新たな研究テーマとして検討していきます。

🌍国際ネットワークとの接続

フランス、アイルランド、アンティル諸島における「沼地研究会」の動向が紹介され、
国際的な比較研究や連携の可能性について、情報共有を進めていく予定です。

📖若手世代の関心の芽吹き

博士課程の学生からは、沼地をテーマにした卒論研究とPONDALIZEの活動を重ねながら、
風景の奥行きとしての沼」への関心が寄せられました。
今後は若い世代との対話と実践を深める取り組みにもつなげていきます。


🌱今後に向けて:沼を語りなおす連携の輪へ

今回のトークは、PONDALIZEにとって実践と言語化の架け橋となる機会でした。
多様な専門知とローカルな実践が、沼という緩やかなメディウムを介してつながる

PONDALIZEは、「沼の時間」をキーワードに、
沈みながら、つながるランドスケープの未来を編んでいきます。

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