人文学から迫る環境危機──UCSCが示す新しい視点

今朝の沼ニュース 2025-11-20

UCSCが提案する「環境人文学」という考え方

University of California, Santa Cruz(UCSC)が公開したニュース記事「Humanistic approaches to urgent environmental issues」(参照リンク)では、急速に深刻化する環境問題を、人文学の立場からとらえ直す試みが紹介されていました。そこで語られていたのは、自然を単なる資源や背景として扱うのではなく、人間と相互に関わる存在として理解しようとする姿勢です。

UCSCでは、生物学や気候科学といった自然科学に加えて、文学、倫理、法律、文化史、公共史の知見を横断的に結び合わせています。さらに、地域住民や先住民コミュニティが持つ経験や知識、そしてアートや展示活動まで視野に入れることで、気候変動、生態系の破壊、社会的脆弱性が複雑に絡み合う「ポリクライシス」により深く向き合おうとしているのです。

自然環境をデータだけでなく「語られる物語」として読む視点を持ったことはありますか?

アートが語りなおす環境の変化

記事では、UCSCの教員たちがアート作品や展示を通して、環境変動がわたしたちにもたらす物語の変化を探ろうとしている姿が描かれています。生きものと人のつながり、時間と場所の文化的な意味づけ、そして変わりゆく景観が突きつける倫理的な問いかけなど、科学データでは捉えきれない“環境の経験値”を浮かび上がらせようとしているのです。

その営みはエコクリティシズムや気候人文学、公共史学と深くつながっており、自然環境の変動を文化的な側面から理解する新たな視座を与えてくれます。

湿地・沼地からはじめる「環境×文化資源」のフィールドワーク

ここからは、記事をきっかけに考えたアイデアを紹介してみます。

たとえば、ある湿地や沼地──マングローブ、河畔地域、都市縁辺の転用湿地など──をフィールドに選び、そこで暮らす人びと、動植物、水系が育んできた時間的・文化的記憶を、市民科学とデジタルアーカイブの力を借りて可視化する試みはどうでしょうか。現地での聞き取り、映像や音声の記録、GISによる地図化、住民によるワークショップを重ねることで、「湿地と人が共有してきた時間」を語るアーカイブが形づくられていきます。

こうした営みは、文化資源学と環境人文学が出会う新しい研究モデルとして、十分に発展の余地があるように感じます。

地域政策やサービスとしての応用可能性

ビジネスの観点から見ても、このアプローチには応用の可能性があります。環境と人文学を組み合わせたプロジェクトを、自治体、環境NPO、博物館と協働しながらサービス化する構想です。地域の環境文化資源を調査・整理し、デジタルアーカイブとしてまとめ、市民参加型のワークショップで共有の場をつくる。こうした一連の流れをパッケージ化することで、湿地保全や気候レジリエンス政策に役立つ「文化的価値の可視化」を支援できるのではないでしょうか。

身近な地域で、自然環境を文化的な記憶の層としてとらえなおす視点が、何か新しい気づきをもたらしてくれるかもしれません。


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