今朝の沼ニュース 2026-01-05
「遺跡を守るための許可制度」のはずが、実際にはほぼ全部が承認されている——。米ワシントン州で、考古学的発掘(地面を掘る・遺物に触れる)に関する許可が過去25年で99.55%承認、否決はわずか4件だったことが報じられました。先住民族コミュニティは「これでは文化資源を守れない」と警鐘を鳴らし、制度の“ねじれ”があらためて浮き彫りになっています。
「許可=保護」ではなく、「許可=破壊の条件づけ」になっている
記事で象徴的なのは、州の歴史保存の責任者でもある考古担当トップ(SHPO)が、制度の限界を率直に認めている点です。許可は文化資源を守る権限を与えるものではなく、むしろ「どういう条件なら影響(損壊・移動・撤去)してよいか」を定める色合いが強い。だからこそ、回避(避けて守ること)は“必須ではない”という現実が生まれます。
CRM(文化資源管理)が“開発側の都合”に引っ張られやすい構造
許可の前提となる調査は、多くの場合、開発事業者が費用を出し、開発側が雇ったコンサル(商業考古会社)が実施します。ここに構造的な緊張があります。調査の質が十分でなければ州が差し戻すことはあっても、判断の主導権が限られる以上、「調査で見落とされる」「少なく見積もられる」リスクが残る。実際、過去の調査で文化資源の記載漏れが起きた事例も触れられ、先住民族側は「掘り始めてから“実は大きな遺跡だった”では遅い」と危機感を強めています。
「協議はあるが、同意(consent)はない」——FPICが届かない現場
制度上は、部族との協議(consultation)が行われます。でも問題は、協議が“聞くだけ”で終わり得ること。記事では、部族側が「止める法的手段がほとんどない」苦しさを語り、さらに月300件超の協議案件に対してレビュー担当が1〜2人という、運用キャパの限界も示されます。
この背景には、国連の先住民族権利宣言などで重視されるFPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意)の考え方が、米国の制度・私有財産観とぶつかり、法制度としては十分に根付いていない、という大きな文脈があります。
まとめ
今回のニュースが突きつけるのは、「制度がある=守れている」ではない、という現実です。許可が高い割合で承認されること自体が悪とは限りませんが、“守るために止められる権限”が弱いままでは、開発圧が高まるほど文化資源は消耗していきます。考古学・文化資源管理(CRM)は技術の話に見えがちですが、実はど真ん中が法・ガバナンスと権利。ワシントン州の事例は、その最前線を示す重要な材料になりそうです。
参照:https://www.hcn.org/articles/washington-approves-over-99-of-archaeological-permits-records-show/
