今朝の沼ニュース 2025-12-13
音楽研究の世界で、計算音楽学(Computational Musicology)や生成系AIの存在感が急速に高まっています。スペイン・バルセロナで続く国際的セミナーシリーズ、2025年開催の大規模国際会議、そして中国伝統音楽をAIで扱う最新研究まで──。いま、音楽と計算・AIが交差する現場では何が起きているのでしょうか。最新の動向をまとめて紹介します。
欧州から発信される研究交流のハブ
― バルセロナMTGの連続セミナーシリーズ ―
スペイン・バルセロナに拠点を置く Music Technology Group(MTG, Universitat Pompeu Fabra) では、Computational Musicology and Music Understanding をテーマとした連続セミナーシリーズが継続的に開催されています。
このセミナーは、音楽情報処理、計算音楽学、機械学習、生成系AIなどを横断する研究者・学生の交流の場として機能しており、最新研究の共有と議論の場として国際的に注目されています。
取り上げられるテーマも、
- 計算音楽分析
- 象徴的・音響的特徴抽出
- 音楽理解における機械学習の応用
など幅広く、音楽研究の理論と技術の両面をつなぐ拠点として存在感を放っています。
国際会議で広がる「計算×認知×文化」
― ICCCM2025が示した研究の多様化 ―
2025年10月、デンマーク・オールボー大学で開催された ICCCM2025(International Conference on Computational and Cognitive Musicology) には、世界各地から計算音楽関連の研究が集まりました。
特に注目されたのが、Computational ethnomusicology(計算民族音楽学) を含むセッションです。
ここでは、音楽を単なる音響信号として扱うだけでなく、
文化・認知・社会的文脈を計算的に扱う試みが数多く報告されました。
計算音楽学が「西洋音楽中心の分析」から一歩進み、多様な音楽文化を対象とする学際領域へ拡張していることが、はっきりと示された会議だったと言えるでしょう。
伝統音楽×生成AIの具体例
― 南音を扱うNanyinHGNN研究 ―
こうした流れを象徴する具体的研究例が、arXivで公開された 「NanyinHGNN」 です。
本研究は、中国の伝統音楽である 南音(Nanyin) を対象に、ニューラルネットワークによる生成・保存モデルを提案しています。
南音は、琵琶(pipa)を中心としたヘテロフォニー構造を持つ伝承音楽で、形式化や自動生成が難しい分野でした。
この研究では、生成系AIと民族音楽データを統合することで、伝統音楽の構造を学習・再現することに成功しており、計算民族音楽学におけるAI応用の実例として高く評価されています。
まとめ:計算音楽学は「分析」から「文化と創造」へ
今回紹介した事例から見えてくるのは、計算音楽学が
単なる音楽分析技術から、文化理解や創造支援を含む総合的研究領域へ進化しているという現状です。
欧州の継続的な研究交流、国際会議での分野拡張、そして伝統音楽を扱う生成AI研究。
これらは、音楽・AI・人文知の融合が今後さらに加速することを強く示しています。
音楽研究の未来は、すでに計算とともに動き始めていると言えるでしょう。
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