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PONDALIZE

  • 米ミシシッピ州で州立大学が主導するデジタル人文学ハブ設立:地域文化資源の公開・保存を支援

    11月 12th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-11-12

    州立大学が地域文化資源のデジタル化をリード

    米ミシシッピ州の University of Southern Mississippi(南ミシシッピ大学) が、州内の公共機関や非営利団体を対象に文化資料のデジタル化・公開を支援する「デジタル人文学ハブ」を設立しました。
    詳しくは 公式リリース で紹介されています。

    このハブは、地域文化資源の保存・共有を支援する中核拠点として構想されており、参加団体は最大4万ドルの助成金を申請できます。助成対象には、デジタル化機材の購入、臨時スタッフの雇用、古文書や写真などの資料デジタル化が含まれます。

    専門家による実践型レジデンシー

    立ち上げ初年度には、図書館学・地理学・口述史・映像技術・プログラミング・ウェブ制作など、多分野の専門家が集まり、夏期レジデンシー(短期集中研修)を開催しました。
    この研修では、州内各機関が連携しながら以下のようなスキルを共有しました。

    • 地理情報の可視化(GISによる文化地図の作成)
    • 古書やテープ資料のデジタル保存
    • ポッドキャスト制作やマルチメディア発信
    • 写真測量(フォトグラメトリ)による3Dアーカイブ

    こうしたスキル交流を通じて、単なる技術支援にとどまらず、地域文化のデジタル表現力を高める共同体づくりが進められています。

    文化資源の「見える化」と地域連携の強化

    このハブが生まれた背景には、ミシシッピ州内で文化資料データが散在しアクセスが難しいという課題があります。
    各地の大学・図書館・博物館・コミュニティ団体に点在する記録を、研究・教育・一般公開に資する形で整理・再活用することが目的です。

    「文化資源のデジタル化」は単なる保存行為ではなく、地域のアイデンティティを未来につなぐための社会的実践でもあります。
    あなたの地域にも、似た課題や可能性はありませんか?

    こんな展開もあり得るのでは?

    このハブの仕組みをベースに、「地域文化資源マッピング+バーチャル散策プラットフォーム」を構築してはどうでしょうか。
    ミシシッピ州内の歴史的文書・口述史・地理データをGISで可視化し、スマートフォンやVRで“地域文化の物語”を体験できるようにすれば、研究者だけでなく
    住民や観光客も参加できる「デジタル・フィールドワーク」になるかもしれません。

    今日のビジネスのヒント

    このようなデジタル人文学ハブの取り組みは、デジタル化サービス、メタデータ整備、アーカイブ構築といった領域に新たなビジネスチャンスを示しています。
    文化資料を保有する自治体・博物館・図書館に向けて、
    「デジタルアーカイブ構築+公開運用サポート」をパッケージ化すれば、文化資源の利活用を促進しつつ、持続的なビジネスモデルを確立できるのではないでしょうか。

  • ADA対応の新ボードウォークで湿地再生を祝う―米ジョージア州ダンウッディ自然センター

    11月 11th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-11-11

    湿地再生とアクセシビリティが両立した新たな自然体験

    米ジョージア州ダンウッディ市は、ダンウッディ自然センター内において、湿地とワイルドキャットクリークの再生事業を完了し、全長300メートルを超える木製ボードウォークを新設しました。
    このプロジェクトは、洪水原の上に高く架けられた構造で、車椅子利用者も安全に遊具や観察デッキへ移動できるよう設計されています。

    途中には屋外教室やベンチが設けられ、環境教育や自然観察の場としても活用可能。
    訪れる人々が四季を通じて湿地の変化を感じ取れる、包摂的で持続可能な空間が誕生しました。

    生態系再生の具体的な取り組み

    事業では、以下のような科学的・工学的手法が採用されました。

    • 護岸の安定化による浸食防止
    • 外来種の除去と在来湿地植物の植栽による生態系修復
    • 水質改善を目的とした自然ろ過機能の回復

    これらにより、湿地の生息域が拡大し、水質の改善と生物多様性の回復が期待されています。
    また、整備によって水害リスクも軽減され、地域の環境レジリエンスが強化されました。

    公的支援と地域連携の成果

    総事業費は172万ドル。
    このうち60万ドルは州環境保護局によるClean Water Act Section 319(h) 助成金から拠出され、市のストームウォーター基金も併用されました。
    資金面だけでなく、地域住民や学校、市職員の協働もプロジェクト成功の鍵を握りました。

    完成記念式典は2025年11月10日午前11時に開催され、市民と関係者が再生湿地を歩きながら成果を共有する予定です。

    市民とともに未来を記録する

    せっかくADA対応で誰もがアクセスできるようになったのですから、来訪者が湿地の変化をスマホで撮影し、メタデータ付きでクラウドに投稿できる「市民参加型デジタルアーカイブ」を構築してみてはどうでしょうか?
    季節ごとの植生や水位、野生動物の出現を時系列で可視化すれば、環境人文学の視点から「街と湿地の共進化」を語る新しい物語が生まれるはずです。

    今日のビジネスヒント

    環境再生とユニバーサルデザインを組み合わせたプロジェクトは、ESG報告や教育旅行先としての需要が高まっています。
    完成後のデータ活用モデルや運用ノウハウをパッケージ化し、他自治体や企業向けに「アクセシブル自然体験+データ利活用」のコンサルティングを提供すれば、新たな収益源を生み出せるでしょう。

  • Talking to Data:人文学データベース向けスマートAIアシスタント研究公開 — LLM×RAGによる自然言語インタラクション強化

    11月 10th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-11-10

    人文学データに「話しかける」時代へ

    2025年6月に公開された「Talking to Data:Smart AI Assistant for Humanities Databases」(arXiv)は、人文学系データベースに対して自然言語で問い合わせができるスマートアシスタント設計を提案しています。
    この研究では、LLM(大規模言語モデル)とRAG(Retrieval-Augmented Generation)を組み合わせ、検索クエリの生成・補正と、回答への関連リンク付与を自動化しています。

    対象となったのは、ロシア語圏の日記アーカイブ「Prozhito」。このデータベースには歴史・人類学分野の研究者が扱う膨大な日記資料が収録されています。研究チームは、専門的な検索構文を理解しにくいユーザーでも自然言語で質問できるようにすることで、学際的な利用促進を目指しました。

    RAGによる「検索補助+文脈回答」

    本研究の特徴は、単なる質問応答ではなく、検索補助と文脈に基づく回答生成を同時に行う点です。

    • ユーザーの曖昧な質問(例:「戦時中の女性の日記を見せて」)にも対応
    • 検索対象のメタデータを自動解析し、関連する日記や人物情報を提示
    • 回答内に参照リンクを明示し、一次資料へのアクセスを支援

    この仕組みにより、従来は専門知識が必要だった人文学データ探索を、誰でも扱いやすくする方向性が示されています。

    応用のタネ:地域・民俗・芸術の現場へ

    この「Talking to Data」のアプローチは、次のような応用が考えられます。

    1. 地方史アーカイブに特化した「まちアシスタント」
       古文書や地域史料を自然言語で検索できる地域文化資源活用AI。
    2. 沼地の生態・民俗伝承データベース連携
       湿地に関する口承・地名・文献を横断検索し、地域文化研究や環境教育に応用。
    3. 博物館・美術館向け対話型ガイド
       展示資料への質問応答に加え、出典や研究情報を返す訪問者アシスタント。

    文化データAIの新しいビジネスモデル

    こうした対話型アーカイブAIを地方自治体・博物館・文化施設向けSaaSとして提供すれば、

    • 利用料(基本プラン)
    • カスタム連携(GISや展示システム等)

    といった持続可能な収益モデルを設計できます。
    「Cyber Humanities」とも呼ばれる新領域の中で、人文学データを誰もが“話しかけられる”形にすることは、知の公共性を再定義する挑戦といえるでしょう。

  • 沼妖精file:003 夢紡ぎのルナリア

    11月 9th, 2025

    今週の沼妖精のささやき 2025-11-09

    夢紡ぎのルナリアー夢を撫でる手のひら

    「悪い夢ほど、やわらかく撫でてあげると甘くなるのよ」
    ーー夢紡ぎのルナリア

    夜の森の奥、ルナリアは月の雫を指先で転がしながら微笑んだ。
    彼女の羽根の泡には、誰かの夢の断片が映っている。
    黒い影が怯えるように揺れている泡もあったが、ルナリアはそれを優しく撫でた。
    すると泡の中の影が、淡いピンク色に変わり、眠る子の表情が穏やかになった。

    人間の世界では「悪い夢はストレスの現れ」と言われる。
    でも神経科学の研究によれば、悪夢は心の“整理整頓”の一部でもあるらしい。
    夢の中で恐れを体験することで、脳は現実の不安に対処する力を強くする。
    ルナリアが撫でるように、私たちも「怖かった夢」に少しだけ優しくしてみると、
    それは案外、心のメンテナンスを手伝ってくれていたりするのだ。

    🌙 行動のタネ

    今夜は、夢をノートに書き留めてみよう。
    嫌な夢でも「おつかれさま」と書き添えてあげる。
    その瞬間、夢の泡がふわりと虹色に変わるかもしれない。

  • World Digital Preservation Day 2025:なぜ「保存するのか」問うデジタル遺産の意義

    11月 8th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-11-8

    「Why Preserve?」——世界が一斉に考える保存の理由

    2025年11月6日、世界各地でWorld Digital Preservation Day(WDPD)が開催されました。今年のテーマは「Why Preserve?(なぜ保存するのか)」。
    主催するDigital Preservation Coalition(dpconline.org)は、デジタル文化遺産をめぐる「保存の意味」を改めて問う日として位置づけています。

    この日は、図書館・アーカイブ・博物館・大学などの研究機関、そして企業・市民団体までが、自分たちのデジタル資産をどのように、なぜ残すのかを再考する機会です。
    特に注目されたのが、ボーンデジタル資料(born-digital)の保存。フォーマットやメタデータ、アクセス権の制御など、紙資料以上に複雑な条件を持つため、単なる「バックアップ」では済まされません。

    デジタル保存は、「未来に向けた戦略的な行為」へと進化しています。組織は、何を、どのように残していくべきでしょうか?


    研究の現場で深めたい「未来志向の保存」の視点

    「なぜ保存するのか?」という問いは、デジタル保存の技術論に終始せず、創造的なリサーチの起点になり得るはずです。

    大学や研究機関の現場こそ、この問いを「未来の再活用」という視点から掘り下げることが強く望まれます。

    例えば、地域の口承記録や講義動画といったデジタル資料を管理する中で、「これらのデータは、50年後の研究者にとってどのような意味を持つか?」という問いを常に中心に置くべきです。

    この視点を持つことで、単なるバックアップを超え、未来のAIによる創造的な再利用を可能にするためのメタデータ設計やアクセス層の仕組みを戦略的に検討する機会が生まれます。デジタル保存は、過去を守る行為であると同時に、未来の研究可能性をデザインする戦略的な行為へと進化させるべきなのです。

    この「未来から過去を見つめる」視点こそが、「なぜ保存するのか?」という抽象的な問いを、実践的かつ創造的なリサーチへと変える鍵となります。


    ビジネスの観点から見た「保存戦略」

    文化資源やデジタルアーカイブに関わる企業・団体にとっても、WDPDは見逃せません。
    「Why Preserve?」というテーマを切り口に、以下のような展開が考えられます。

    • 組織向けデジタル保存ワークショップの開催
    • 「保存から活用へ」を掲げたコンサルティング・サービス
    • メタデータ設計・AI活用支援の新規パッケージ

    こうした提案を通じて、「データを残す」から「価値を継承する」へ。
    保存をビジネス価値に変える発想が、今まさに求められています。


    組織にとっての「Why Preserve?」

    もし今日、手元にある資料が50年後に再び人を救うとしたら、どんな仕組みで残しておきたいと思いますか?
    デジタル遺産の保存は、技術の問題であると同時に、「未来への責任」そのものなのかもしれません。

  • 日本のアート市場の現状と可能性〜地域の図書館x美術館からアートで日本再興を〜

    11月 7th, 2025

    ぬまみん・御友重希さんから、注目のフォーラム開催のお知らせです。
    アートフェア東京の北島輝一さん、ライターの山内宏泰さん、そして元東京国立近代美術館長の神代浩さんらが登壇し、「アートの力をどう社会に生かしていくか」を本音で語り合います。

    アートが「地域」や「知の場」とどう結びつき、どんな未来を描けるのか――。
    図書館と美術館という身近な文化インフラを起点に、日本のアート市場の今とこれからを見つめ直す、貴重な機会です。

    🗓 2025年11月12日(水)18:00〜19:30(オンライン)
    主催:オール・ミュージアム・アンヌアーレ実行委員会(第27回図書館総合展 第2期)
    詳細・視聴リンクはこちら👇
    🔗 https://2020.libraryfair.jp/forum/2025/1979

    ◾️登壇者
    北島輝一
    (アートフェア東京 マネージングディレクター)
    山内宏泰
    (ライター、「上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史」著者)
    御友重希
    (公共創造家見習、Chathamhouse元客員研究員、CePiC-SIH-LdxP メンター共同代表)
    神代浩
    (オール・ミュージアム・アンヌアーレ実行委員長、元東京国立近代美術館長、コーディネーター)

    ◾️内容
     現代社会において新たな価値を創造したり、イノベーションを創出したりする上で、アートが持つ役割に注目されるようになって久しい。しかし、我が国ではアートの持つ力が価値創造やイノベーションに効果的に作用している事例は少ない。その背景には、アートに関わる市場関係者と美術館関係者の間のコミュニケーション不足にあるのではないか?両者がアートの有する様々な力と可能性を社会に対して十分伝えることができていないからではないか?

     アートの力で社会を少しでも善い方向へ変えていくために、まずは日本のアート市場の現状を知るとともに、アート市場と美術館が手を携えるきっかけがどこにありそうか、そして両者が連携協力して新たな価値の創造やイノベーションを後押しするにはどうすればよいのか、議論する。

  • ネット追悼を“記憶の風景”に可視化 — 中国の遺憾表象作品『Tides of Memory』公開

    11月 6th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-11-6

    デジタル空間に咲く「記憶の花」

    2025年9月に Tides of Memory: Digital Echoes of Netizen Remembran が arXiv に公開されました。
    この研究は、中国で著名作家の訃報を契機に発生した ネット上の追悼投稿(主に微博) をスクレイピングし、自然言語処理 と トピックモデル分析 を用いて再構成したデジタル作品です。

    膨大な断片的テキストを 3D 空間で可視化し、ネット上の集合的な悲しみや記憶が波のように広がる様相を「追悼の風景」として表現しています。まさに、個人のレガシーと社会的記憶が交錯する瞬間を、視覚的・分析的に捉えようとする試みです。

    「記憶の可視化」が示す新しい文化資源のかたち

    この作品が興味深いのは、単なるビッグデータ可視化を超え、文化的実践としての追悼行為を“文化資源”として再解釈している点です。
    ネット上のコメントやタグ、絵文字までもが分析対象となり、それぞれが「言説のかけら」として空間化されます。
    自分の発した言葉が“記憶の風景”の一部になるとしたら、どんな言葉を残したいと思いますか?

    研究・創作への応用のタネ

    このアプローチは、中国のネット文化に限らず、他地域・他主題にも展開可能です。たとえば:

    • 日本における著名文化人の追悼や震災記憶を対象に、SNS上の言説を可視化して「記憶の風景マップ」を生成する。
    • デジタル環境人文学(Digital Environmental Humanities)の観点から、湿地・沼地にまつわる民俗伝承や地名の言説を集め、「沼地の記憶地図」を可視化する。
    • 歴史アーカイブに眠る古文書・新聞記事を分析し、「消えゆく言葉・地名」の変遷を可視化して世代間の文化変動を探る。

    これらはいずれも「失われゆく言葉や感情を可視化する」デジタル・ヒューマニティーズ的営みといえます。

    今日のビジネスTip:記憶をインフラにする

    もしこうした「記憶可視化」システムを 自治体・図書館・追悼施設 向けに提供できたらどうでしょう?
    たとえば、追悼行事の記録、地域文化のアーカイブ、災害復興の記憶共有などに応用できます。
    SaaS 型の“記憶可視化プラットフォーム”として展開すれば、文化資源の継承を支える新たな価値提供モデルになりうるはずです。

  • Pondalarアルバム「7 Days HERB TEA」& シングル2作、配信スタート!

    11月 5th, 2025

    Pondalarの新しいインストルメンタルBGMアルバム
    『7 Days HERB TEA』 が、11月4日に配信スタートしました。

    一週間のリズムをハーブティーになぞらえた全7曲のBGM集。
    月曜の「Spark Mint」から日曜の「Sun Red」まで、
    それぞれの一日をやさしく包むような音の香りが広がります。

    さらに、アルバムの最後を飾る2曲、
    「Good Job, Me!」 と 「Aroma Japanesque」 は
    ボーカル入りのシングルとしても同時リリース。
    歌詞に込めた小さな希望と余韻を、どうぞ感じてください。

    各配信プラットフォームへのリンクは、
    Pondalarのアーティストページからアクセスできます。

    PONDALAR

    ゆったりとした午後やティータイムに、
    あなたの一週間に寄り添うBGMとしてお楽しみください☕✨

    そして、この一週間の曜日に合わせた7曲は、一年ほど前に(まだPondalarデビュー前です)「ほびっと」名義で製作した「カラフル7daysハーブティーセット」の7種類のブレンドハーブティーに対応しています。

    ハーブティーのご購入はLITTLE ARTISTS LEAGUE SHOPから

    Pondalarの楽曲とハーブティー、合わせてお楽しみいただけたら嬉しいです♪

  • Humanitextプロジェクト、AIプラットフォーム「Humanitext Antiqua」をボン大学で発表へ

    11月 4th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-11-4

    古典受容研究とAIの接点を探る新たな試み

    ドイツ・ボン大学CCT(Centrum für Classical Tradition)は2025年11月6日、古典受容研究ワークショップ「XI. Atelier ‘Antikerezeption’」を開催します。その場で、名古屋大学発のHumanitextプロジェクトを率いる岩田直也氏が、生成AI対話プラットフォーム「Humanitext Antiqua」を初めて国際的に紹介します。
    → 公式発表はこちら

    RAGで古典語テクストの検索精度を強化

    「Humanitext Antiqua」は、Retrieval-Augmented Generation(RAG)技術を中核に据えています。ギリシャ語・ラテン語のテクスト検索において、文脈情報を統合してハルシネーション(誤生成)を抑制し、研究者が信頼できる根拠ベースの回答を得られるよう設計されています。

    たとえば、ある古典詩の語義を問うと、Antiquaは複数の文献断片を参照し、使用文脈・語源・関連箇所を透明性のある形で提示します。AIが「なぜそう答えたか」を説明できる設計は、人文学研究の再現性と検証性を高めるうえで重要なステップです。

    国際アーカイブ連携と公開APIの可能性

    発表資料によれば、Antiquaは公開APIを備え、各国のデジタルアーカイブや学術機関のデータベースと直接接続可能です。今後は欧州・アジア間の古典資料共有ネットワークを拡充し、学際的な研究協働の基盤として活用されることが期待されます。
    この点について岩田氏は、「AIは資料の“理解補助”であり、研究者の判断を支援するためのツール」と述べています。

    人文学とAIの共創が拓く未来

    ボン大学での発表では、ヨーロッパのデジタル・ヒューマニティーズ共同体とHumanitextチームの研究者が、AIが古典学にもたらす新しい可能性を議論します。希少史料の再発見や国際共同研究の促進を目指す動きは、AI時代の人文学のあり方を再定義する試みとも言えます。


    創造のタネ:地域史料とAIの融合

    もし地方史料館が所蔵する浮世絵や江戸期の村方文書を「Humanitext Antiqua」と連携できたらどうなるでしょうか。AIが自動で翻訳や解題を付与し、地域史をARで可視化するアプリを通して、観光客が町を歩きながら過去の生活や沼地の変遷を体験できる――そんな「物語主導型デジタル遺産ツーリズム」が現実味を帯びます。


    今日のビジネスヒント

    「人文学特化型RAGプラットフォーム」を大学図書館や博物館へサブスクリプション提供する仕組みが注目されます。蔵書メタデータの整備から多言語検索インタフェースまでをワンパッケージ化し、導入コンサルを省くことで低コストDXを実現可能です。
    さらに、公的助成金と企業スポンサーを併用した「文化資源デジタルインフラ」モデルを採用すれば、持続的な収益と社会的価値の両立が見えてきます。

  • Quantum est in Libris:アーカイブ × 生成AIによる記憶の揺らぎ

    11月 3rd, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-11-3

    100年前の記録が「動き出す」瞬間

    100年以上前に手書きで残された民族誌の日記が、最新の生成AIによって動き出す——そんな不思議な光景を想像したことはあるでしょうか。
    2025年9月、Mar Canet Sola と Varvara Guljajeva による論文 「Quantum est in Libris: Navigating Archives with GenAI, Uncovering Tension Between Preservation and Innovation」 が発表されました。舞台はエストニア国立博物館(ERM)。ここに保存されていた手書きの民族誌資料を、生成AIモデル「Runway Gen-3」と「Gen-4」を使って映像作品へと変換するという大胆な試みです。

    この研究が描き出すのは、アーカイブの新しい姿です。かつて「保存されるもの」だった記録が、AIの手を借りて「再び語り出すもの」へと変化していく。過去と未来、記録と創造のあいだに揺らぐ“記憶”のあり方が、静かに問いかけられています。


    記録は、誰の「記憶」なのか?

    このプロジェクトの中心にあるのは、エストニア国立博物館(ERM)が所蔵する100年以上前に手書きされた資料。研究チームはその一部をデジタル化し、AIに読み込ませました。すると、そこから生まれたのは、文字でも写真でもなく、「映像」としての新しい記憶。観客はスクリーン彫刻のような装置を通して、手書きの物語が再び動き出す瞬間を体験します。

    印象的なのは、AIが資料を「再構築」することで生まれる誤差や解釈のズレが、むしろ創造の一部として受け止められている点です。
    人間が忘れてしまった断片を、AIが読み違える。けれどその誤読が、まるで記憶が揺らめくような「もうひとつの真実」を浮かび上がらせるのです。

    研究者たちは、保存・継承を目的とするアーカイブを、生成AIによって「再生可能な素材」として再定義しています。静的な“記録”が、動的な“体験”に変わる。その瞬間こそ、アーカイブと生成AIが出会う場所なのです。


    アーカイブを「体験」に変える三つのヒント

    この研究から生まれるアイデアは、文化資源の分野にとどまりません。わたしたちの身近なアーカイブや記録にも、まだ眠っている可能性があります。

    たとえば、地域に残る古文書や家族の日記をAIで再構成すれば、誰も知らなかった物語が蘇るかもしれません。
    あるいは、企業や自治体が抱える膨大な記録を「見る・聴く・触れる」体験型コンテンツに変えれば、文化やブランドの新しい価値を生み出せます。

    さらに、AIが再構築する「未来のアーカイブ」という視点もおもしろいテーマです。AIが生成するデータや創作物は、いつか未来の人々にとっての“遺産”になるかもしれません。そのとき、何を残し、何を変えていくのか。アーカイブは過去を守るだけのものではなく、未来を創るための実験場になりつつあるのです。


    今日のビジネスTip:眠っている記録を、動かしてみよう

    ビジネスの現場でも、この発想は有効です。企業の創業記録、製品の変遷、社史やインタビュー映像などは、立派な“アーカイブ資源”です。生成AIを使えば、それらをストーリー映像やインタラクティブな展示に変えることができます。保存しておくだけでは生まれなかった体験価値が、そこから生まれるかもしれません。

    ただし、AI生成には誤読や著作権などのリスクも伴います。原典を明示し、プロセスを透明に保ち、文脈を丁寧に伝えることが大切です。
    「記録を再構成する」という行為は、単なる技術ではなく、責任と創造のバランスが問われる新しい文化実践なのです。


    記憶がゆらぐ、その美しさ

    「Quantum est in Libris」が示したのは、アーカイブと生成AIの交差点に生まれる“ゆらぎ”の美しさです。
    保存のために閉じられていた記録が、AIによって再び動き、語り出す。その瞬間、私たちは問い直します——いま目の前にある記憶は、本当に「過去のもの」なのか?

    あなたの手元にも、眠ったままの記録があるはずです。
    それをAIとともに“再び語らせる”としたら、どんな物語が生まれるでしょうか。

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