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PONDALIZE

  • 沼妖精file:002 コンクリートの芽生え

    11月 2nd, 2025

    今週の沼妖精のささやき 2025-11-02

    コンクリートの芽生え ― ひびの中の希望

    「ひびの中に希望を植えるのが、わたしのしごと」
    ーーコンクリートの芽生え

    夜の街の片隅。ビルの影が交差する路地の裂け目に、ちいさな妖精がしゃがみこんでいます。
    手のひらほどの透明な体の中で、光がちかちかと瞬く。彼女は、コンクリートの割れ目に拾った種をそっと落とし、指先でトントンと優しく押さえます。
    まるで街の心臓に、こっそりと夢を植えるように。

    この妖精が好きなのは、「完璧じゃない場所」。
    ひび割れ、欠け、汚れた面——そこには光が差し込む小さな隙間があるからです。
    科学的にも、実際の植物はコンクリートの隙間でも生きられるそうです。アスファルトを突き破る雑草の力は、根の圧力が数十キログラムにもなることがあるのだとか。
    弱々しく見える芽にも、意志のような力が宿っているんですね。

    人間の心も、少し似ています。
    傷ついた場所や欠けた部分にこそ、次の何かが芽吹く余地がある。
    「完全でないこと」を恐れず、そこに小さな希望を植える——それが、この妖精が教えてくれる生き方です。


    🌿 行動のタネ

    今日、自分の中の“ひび”をひとつ見つけてみましょう。
    それを責めずに、そこへ「何か新しいものを植える」と想像してみてください。
    たとえば、失敗のノートに次の挑戦のアイデアを描く。
    沈黙の時間に、未来の小さな種をまく。
    それで十分、妖精が微笑む音が聞こえるはずです。

  • エデュケーション大学香港、西九龍スタディセンター開設──デジタル・ヒューマニティーズなど11大学院課程の拠点に

    11月 1st, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-11-1

    何が起きたのか

    2025年10月31日、エデュケーション大学香港(EdUHK)が西九龍文化地区・戯曲中心(Xiqu Centre)内にWest Kowloon Study Centreを正式開設しました。新拠点は約6,300平方フィートの都市型施設で、教室2室+多目的スペース、ラーニングコモンズやディスカッションルームなどを備え、学際学習と知の交流を加速させるために設計されています。場所はAustin Road West 88(MTRAustin駅至近)。都市中心部の立地により、通学時間の短縮と学習体験の向上が期待されます(プレスリリース)。

    どんなプログラムが集約されるのか

    2025/26年度から、このセンターは修士課程10と(学校)マネジャー研修1の計11プログラムの主要会場になります。人文・芸術・教育・スポーツ・テクノロジーまで、文化資源と教育を架橋するラインナップです。たとえば、Master of Arts in Digital Humanities for Cultural Professionals(デジタル・ヒューマニティーズ/香港唯一の専門修士)もここを主会場とします(学位情報)。

    • 対象分野の例:デジタル・ヒューマニティーズ、音楽教育、美術教育・創作、教育史、英語教育、中国語教育、中国学(言語教育)、プレイセラピーとウェルビーイング、コーチングとスポーツマネジメント、将来人材のための新興技術、マネジャー研修(合計11)

    大学の戦略との結びつき

    EdUHKは2025–2031戦略計画で「Education Futures」を掲げ、学際研究・知識交流・国際化を柱に据えています。今回の拠点は、芸術と教育を結ぶ文化素養(cultural literacy)の涵養と、地域連携の強化を担う実装拠点です(戦略計画/特設サイト)。都市部のアクセス性を活かし、公開講座・ワークショップ・市民参加型プロジェクトの場としても活用されます。

    文化資源学・人文情報学の視点で見るポイント

    • 都市立地×文化施設内:劇場(Xiqu Centre)内という環境自体が、公演データ・観客データ・空間データを横断する実験場になります。
    • プログラム横断:教育(TESOL/中国語教育)とデジタルアーカイブ系(DH)・アート教育が隣接。共同制作と教育効果測定を同時に設計できます。
    • 地域接続:尖沙咀〜西九龍文化地区の観光・文化経済圏へダイレクトに接続し、社会実装まで見通した学修デザインが可能です。

    都市の「文化回路」に学内プロジェクトをどう接続すると、受講生の就業スキルと地域便益が同時に伸びるでしょうか?

    “創造・研究のタネ”(物語的プロトタイプ)

    時空クロスアーカイブ:歩いて読む150年の香港

    新センターを舞台に、香港の多言語新聞アーカイブ約150年分を学生がXR空間に再構築。来場者は当時の街並みを歩きながら記事を読む体験へ…なんて、どうでしょうか?

    • 学びの横断:歴史探究+言語学習+観光体験。
    • 人文情報学の実装:OCR・言語横断検索・地理参照(ジオレファレンス)・タイムスライダー。
    • 現地性:戯曲中心の公演スケジュールと連動し、上演作品の時代背景や批評史をその場で辿れる。
    • 評価設計:閲覧行動/回遊時間/言語切替と理解度を学習アナリティクスで可視化。

    今日のビジネスのヒント

    XR化した史料を核に、劇場・博物館と連携した有料ワークショップや季節限定ツアーを商品化しましょう。教育×観光の二重市場を開拓でき、大学発スタートアップとして「文化教育+没入技術」の先行者利益を取りにいけます。B2G(文化局・観光局)との共同プロモーションやB2B(旅行会社/MICE)とのパッケージ造成で客単価の最大化を狙えます。

    この記事で押さえたい要点(1分まとめ)

    • 2025年10月31日開設/西九龍文化地区Xiqu Centre内。
    • 約6,300平方フィート、学際学習の拠点。
    • 11プログラム(修士10+研修1)の主要会場、DH修士も含む。
    • 戦略計画2025–2031の中核:芸術×教育の統合、地域連携と国際化を推進。

    参考情報

    • 2025-10-31|EdUHKプレスリリース:https://www.eduhk.hk/en/press-releases/eduhk-opens-west-kowloon-study-centre-to-advance-interdisciplinary-learning
    • 2025-05-22|戦略計画プレスリリース:https://www.eduhk.hk/en/press-releases/eduhk-announces-strategic-plan-2025-2031-a-blueprint-for-education-futures-across-four-key-areas
    • (参照)戦略計画特設サイト:https://www.eduhk.hk/sp2025-31/en/index.html
    • (参照)デジタル・ヒューマニティーズ修士(MADHCP):https://www.eduhk.hk/fhm/postgraduate-programme/master-of-arts-in-digital-humanities-for-cultural-professionals-madhcp
  • 2025.11.12 周防大島高校&介 塾 主催 映像詩「瀬戸内α波」上映会&シンポジウム

    10月 31st, 2025

    ぬまみん井上恭介さんからお知らせです。


    瀬戸内海に浮かぶ山口県の島・周防大島で、来月12日、地元の県立周防大島高等学校の生徒たちと一緒に、映像上映会とシンポジウムを開きます。
    テーマは「高校生目線で見る島の経済・社会・未来」。大人の常識や評価とは少し違う、彼らならではの感性で、この島の未来を語り合いたいと思っています。

    私がこの島の高校生たちと出会ってから、もう2年あまりになります。その日々をカメラで追い続け、一本の作品にまとめました。
    タイトルは「映像詩・瀬戸内α波」。気持ちのいいときにあふれ出る脳波=α波のように、穏やかで、希望に満ちた島の時間を感じながら制作した100分の作品です。当日はこの作品を会場で初上映します。

    上映のあとには、高校生3人をはじめ、地域エコノミストの藻谷浩介さん、心療内科医の中尾睦宏さん、周防大島高校OBの村田結透さん、保護者代表の白鳥匡史さんたちと一緒に、パネルディスカッションを行います。
    司会は、NHK広島放送局でも長く活躍された松尾剛アナウンサー(NHK財団)です。テーマは「周防大島の未来創造」。若者と大人が対等に語り合う時間にしたいと思っています。

    私は、NHK広島放送局勤務時代から、脱・従来型資本主義を志向し、身の回りの資源を生かして豊かさを生み出す周防大島の人々を取材してきました。
    藻谷浩介さんらと共に執筆した『里山資本主義』は40万部のベストセラーとなり、この島は“里山資本主義の最先端地”として注目を集めてきました。
    しかし今回は、そうした「評価される地域」ではなく、未来を生きる高校生たち自身のまなざしを通して、この島を見つめ直したいと考えています。

    シンポジウムは、11月12日(水)10時から、周防大島橘総合センターで開催します。参加は無料ですが、11月10日までに事前の申し込みが必要です。
    詳細・申込フォームはこちらからどうぞ。
    👉 https://www.sukejuku.jp/event_form1

    詳細は、こちら↓

    周防大島高校& 介塾主催 映像詩「瀬戸内α波」上映会&シンポジウム 2025年11月12日(水)

    井上恭介(いのうえ きょうすけ)

    大学時代、東京学生英語劇連盟委員長として英語ミュージカル「FAME」の100人のキャスト・スタッフを束ね、5公演6000人の観客を魅了した。NHK報道番組プロデューサーとして「NHKスぺシャル」「クローズアップ現代」で名作を連発。現在は独立して、未来提言の著書「ウルトラウォーター」やオリジナル映像作品を配信している。

    リンク https://sukejuku.jp

  • 🌿ご報告と感謝🌿

    10月 30th, 2025

    PONDALIZE(沼タイズ)発起人でアーティストの小林三悠より〜


    横浜春節祭2026-27にて登壇の機会をいただきました🙌

    プレゼン大会Cyclone2025にて最優秀賞を受賞した構想「FOREST within Occupational Therapy 」舞台芸術のこれまでと、比企丘陵の沼場文化創出のこれから、そして木材産業を含めた構想。
    この旅を支えてくださった皆さんへ、改めて心からの感謝をお伝えします。
    寄付、応援、まなざし、言葉――すべてが私の歩みの力になりました。

    そして次の展開として、横浜春節祭2026-27にて登壇の機会をいただきました。
    文化創造・地方創生・都市再生をテーマに、
    「自然と人が共進化するケアの場」について、5分間のプレゼンを行います。

    「話だけでも聞いてみようかな」と思ってくださる方、
    ぜひ、またお会いできますように🌱


    ◤秋祭2025 は11/1-3開催されます◢
    ※ 小林三悠の登壇は11/1(土)です。

    11/1(土)【第3弾 AI/DX共創アカデミー】

    11/2(日)【SIH国際ビジコンFinal】

    11/3(月㊗️)【LdxP★★認定/★★★候補ピッチ】

    (詳細•申込等)https://cepic.earth/so/3fPdBQ3Vh

    CePiC-SIH-日本DX地域創生応援団ほか協力して開催する、11/29(土)Japan DX Player Award 2025

    https://japandx.info

    に向けた、秋祭り2025 11/1-3の内容・参加申込等のご案内です。

    変化の激しい時代、全国・世界をリードする次世代の今年最大の連続イベント、ご同僚含め、こちらも奮ってご参加ください。‌

    11/1(土)【第3弾 AI/DX共創アカデミー】

    (詳細等)https://sih.earth/event/876

    11/2(日)【SIH国際ビジコンFinal】

    (詳細等)https://sih.earth/event/843

    11/3(月㊗️)【LdxP★★認定/★★★候補ピッチ】

    (詳細)https://digital-supporter.net/contest251103/

    (申込)https://form.run/@20251103Entry

    ※関連イベント

    10/14(火)マサルくん ユーザー説明会

    (詳細)https://digital-supporter.net/masaru1014/

    (申込)https://form.run/@AI-masarukun-userkai-0

    (11/1-3詳細•申込等)

    https://cepic.earth/so/3fPdBQ3Vh

  • シカゴ歴史博物館「Aquí en Chicago」開幕──学生運動が実現させたラテン系市民史展とデジタル・ヒューマニティーズ

    10月 29th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-29

    「自分たちの物語を展示してほしい」──高校生の声が動かした博物館

    2025年10月25日、シカゴ歴史博物館(Chicago History Museum)が公開した新常設展「Aquí en Chicago(ここ、シカゴで)」は、単なる地域史展ではありません。
    この展示の発端は2019年、同館を訪れた高校生たちの
    「館内に自分たちの歴史がない」というSNSでの抗議でした。そこから博物館との対話が始まり、6年の歳月を経て、市民と学生の声が展示を形づくったのです。

    展示は英語とスペイン語の二言語構成。クインセアニェーラのドレス、ボンバ太鼓、タマレ屋のクーラーなど、多数の生活資料が、高校生がつけたラベルとともに並びます。地域の“生きた記憶”をそのまま体験するかのような展示です。

    出典:Chicago History Museum opens “Aquí en Chicago”(Chicago Sun-Times, 2025年10月26日)


    デジタル・ヒューマニティーズが可能にした「市民が綴る展示」

    展示設計には、デジタル・ヒューマニティーズ研究者のジョジョ・ガルバン・モラ(Jojo Galván Mora)が参画。

    「市民が自らの歴史を記録し、公共文化施設を変革できる」という理念を実装した試みであり、博物館の在り方を問い直す実践的モデルといえます。

    会期は2026年11月8日まで。しかし、この展示の真価は「終了後も残るオープンな知識基盤」にあるのかもしれません。


    沼と人を結ぶ「クロノトポス」──展示手法を未来へ拡張する

    注目したいのは、この展示の「参加型・多層的・語りのデザイン」を応用できる可能性です。
    たとえば、「移民史」と「湿地保全」を組み合わせた
    『沼と人のクロノトポス』プロジェクトを構想してみましょう。

    シカゴ河畔の湿地に定住した各国移民の生活史を、

    • 植物標本のDNAメタバーコーディング、
    • 家族写真や口承資料のアーカイブ、
    • GISタイムライン上での視覚化

    などと重ね合わせる。
    来館者はMR(複合現実)ゴーグル越しに過去の風景と家族史を行き来しながら、時系列の“文化生態系マップ”を体験できる。

    このような「場所依存型ヒューマン・エコロジー年表」は、環境教育・エスニック・スタディーズ・アートリサーチを横断する新しい公共学習の装置になり得ます。


    今日のビジネスTips──地域博物館の「XR参加型アーカイブ化」

    「Aquí en Chicago」で用いられた参加型アーカイブ基盤はアナログですが、SaaS型のXRプラットフォームとして展開する構想も興味深いです。
    地域博物館や図書館が月額課金で導入できる「コミュニティ史XRプラットフォーム」を立ち上げるとどうでしょうか。

    来館者が投稿した写真・音声・テキストは、AIによって多言語翻訳・音声合成され、展示端末・スマートフォンの双方で再生可能。
    さらに、投稿コンテンツの閲覧数に応じて寄付ボタンが提示される仕組みを組み合わせれば、

    • 館は展示費用を補填
    • 来館者は社会的貢献を実感
    • 制作会社はテンプレート提供で収益を得る

    という三者メリット型の循環モデルが成立します。
    文化展示が「見る場所」から「参加して育てる場」へ──その流れを技術で後押しする時代が来ています。

  • 極端乾燥が沼地の炭素を「数か月で250年分」放出──Science誌が警鐘

    10月 28th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-28

    以前にも沼ニュースとして取り上げた話題ですが、異なるソースを見つけたので、再度、要約&考察をお届けします。

    「炭素を閉じ込める沼」が、炭素を放つとき

    2025年10月23日付『Science』誌に掲載された、米・コーネル大学らの国際共同研究が世界を驚かせました。
    研究チームは、泥炭湿地──つまり沼地が地球の土壌炭素の30%以上を蓄える「巨大な炭素金庫」であることを再確認しつつも、極端乾燥下でそのバランスが一気に崩れることを実験的に示しました。

    論文によると、高温・高CO₂環境で短期間の乾燥イベントを与えた場合、CO₂放出量が平常時の約3倍に増加。
    わずか数か月で90〜250年分の貯蔵炭素が大気に放出される可能性があると報告されています。
    研究者たちは「今後、干ばつが頻発すれば、湿地は“炭素の貯蔵庫”から“炭素の供給源”に変わる」と警鐘を鳴らしました。

    出典:Peatlands huge reservoir of carbon at risk of release – Cornell Chronicle


    炭素と水のバランスが崩れるとき、微生物が目を覚ます

    泥炭湿地の炭素は、常に水に浸かることで酸素の供給が抑えられ、分解が遅れることによって蓄積されています。
    しかし、水位が下がり乾燥が進むと、好気性微生物が活動を再開し、有機炭素を急速に分解してしまいます。
    つまり「わずかな乾燥」が、「数百年分の炭素損失」を引き起こす引き金になるのです。

    この結果は、温暖化による極端現象の頻度が増す未来を考えると、湿地保全の緊急性を改めて浮き彫りにしています。
    各地域にある“身近な湿地”は、今どんな状態でしょうか?


    沼地を「文化と炭素のアーカイブ」として再発見する

    この研究は、単なる環境問題以上の問いを投げかけます。
    沼や湿地は、炭素を蓄えると同時に、人々の暮らしや信仰、言葉、祭礼を支えてきた文化的な基層でもあります。

    たとえば日本各地の谷津田や高層湿原を対象に、次のような構想を考えてみてはいかがでしょうか。

    • 「湿地デジタルツイン・アーカイブ」構想:
      衛星データやドローンLidarで水位・植生・炭素量をモニタリングしながら、
      地域の祭礼、農法、民話、方言などを動画・音声・テキストで収集。
      それらを IIIF+Linked Data で統合し、炭素変動と文化活動の関係を時系列で可視化。

    このようなアプローチなら、気候変動と文化変容を同時に捉える学際研究が可能になります。
    地域住民がデータ収集に参加すれば、「守る対象」から「共に育てる知の沼地」へと変わっていくでしょう。


    今日のビジネスTips──「Wetland Insight API」の発想

    環境DXと地域経済をつなぐ仕組みも見えてきます。
    たとえば、湿地の炭素量・観光価値・文化的指標をリアルタイムで配信する「Wetland Insight API」を開発し、
    自治体や企業の
    ESGレポート、カーボンクレジット評価、エコツーリズムアプリに提供するビジネスモデルです。

    沼地の保全データが「地域の信用情報」として活用されれば、
    気候変動対策と地域振興を同時に支えるエコシステムが生まれるかもしれません。

    町々に、眠れる“炭素のアーカイブ”があるのではないでしょうか。

  • Europeanaが示す「AI×文化遺産」最前線──AI4Cultureハッカソンが切り拓く“再利用する文化”の未来

    10月 27th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-27

    デジタル文化遺産に「AIの実験場」が誕生

    2025年2月、欧州の文化遺産プラットフォーム Europeana が主導するプロジェクト AI4Culture がハッカソンを開催しました。テーマは「AIツールを使ってデジタル文化遺産データを革新的に変換・研究・展示せよ」。
    参加者には文化機関が保有するデジタル化データやAIツール群、そして教育・スキル向上資料が提供され、5チームが具体的なユースケースを開発しました。

    このイベントは単なる技術コンテストではなく、「AIが文化遺産とどう共創できるか」を探る実践の場でした。

    参照先URL
    https://pro.europeana.eu/post/how-ai-is-transforming-digital-cultural-heritage


    ハッカソンから生まれた5つのプロジェクト

    1. ABC: Automating Blender Code

    2D画像から3Dモデルを生成するAIパイプラインを開発。
    これまで専門的スキルが必要だったBlenderによる3Dモデリング作業を自動化・効率化し、誰でも「文化財の3D再現」に挑戦できる道を開きました。

    2. Patina: de:color of time

    デジタル化作品の経年変化(パティナ)を可視化するツールを構築。
    CNN(畳み込みニューラルネットワーク)で画像を分類し、「作品が時間とともにどう変わるのか」を一般向けに示す試みです。
    ただし、十分な学習データの確保が課題として挙げられました。

    3. DeepCulture

    文化遺産データに対して感情分析(sentiment analysis)を適用。
    作品や記録に内在する「隠れた物語」「人々の感情」を抽出することで、文化資源を“データとして”ではなく“ストーリーとして”再発見するアプローチです。

    4. ArcAIVision

    映像アーカイブをAIで解析し、「移民」などのテーマをメタデータに頼らずに検出。
    BERTopicによるトピックモデリングやK-NNクラスタリングなどを組み合わせ、過去の映像を新しい文脈で再探索する試みです。

    5. Un2Structured

    非構造化PDF(年報・図版集など)から構造化データ(JSON)を自動抽出。
    出所情報や図像学的データを整理し、LLM(大規模言語モデル)を活用したテンプレートプロンプトも実験的に採用しました。


    見えてきた課題と可能性

    これらのプロジェクトが示したのは、AIによって文化遺産データが「読む」「見る」から「変換する・分析する・再利用する」フェーズへ進化しているという現実です。

    一方で、チームからは次のような課題も指摘されています。

    • データ量の不足(Patinaチーム):AIモデルの精度を左右する根本的な問題。
    • メタデータの偏り・限界(ArcAIVisionチーム):人間が付けた分類体系がAIの探索を制約している。

    つまり、AIの活用は単なる技術課題ではなく、文化データの構造と倫理をどう再設計するかという問いでもあります。


    Europeanaが描く「再利用する文化」の未来

    記事全体を通して、Europeanaは「文化遺産を守る」から「文化を再利用し、新しい物語を生む」へというシフトを強調しています。
    その実現には以下の要素が欠かせません。

    • オープンAPI(例:Europeana API)によるデータ共有
    • AIツールと教育資料の整備
    • スキル構築と倫理ガイドラインの策定

    こうした取り組みが整うことで、研究者・クリエイター・市民が文化遺産を“再構築可能な資源”として扱えるようになるのです。
    日本でも、博物館や文書館がAIを通じて「開かれた文化の共創者」として再定義される日が来るかもしれません。

  • 沼妖精file:001 憂鬱の訪れ

    10月 26th, 2025

    今週の沼妖精のささやき 2025-10-26

    憂鬱の訪れ 〜ため息の周波数〜

    「あなたのため息、周波数がいい感じ。サンプリングして曲にしてもいい?」
    ――憂鬱の訪れ

    夜の美術館で、誰もいない展示室にふっと響くため息。
    それを聞きつけてやってくるのが、「憂鬱の訪れ」と呼ばれる妖精です。
    彼(あるいは彼女)は、人の感情が波打つ瞬間の“音”を集めては、静かに体の奥でリミックスしているのだとか。
    藍色の肌を揺らしながら、ため息の湿った響きに耳をすませ、感情の周波数を測定する姿は、少し切なくもあり、美しくもあります。

    人間のため息にも、実際に「周波数」があるといわれます。
    声のトーンや息の長さによって、聴く人の心拍数や脳波にわずかな影響を与えることが研究でも確認されているそうです。
    つまり――ため息は、感情の“音声信号”なのです。
    憂鬱の訪れは、それを「曲」に変える妖精。
    そして私たちは、無意識のうちに、自分の感情を世界に“演奏”している奏者なのかもしれません。

    行動のタネ

    今夜、ひとりで静かにため息をついてみましょう。
    その音を、否定せずに聴いてみるのです。
    長さ、湿り気、リズム。
    それは今日のあなたという“曲”のイントロかもしれません。
    録音してもいいし、ただ耳で感じるだけでも。
    憂鬱の訪れが、どこかでその旋律を拾ってくれるはず。

  • 沼地(ピートランド)が“気候負債”の震源に:極端乾燥で炭素貯蔵数百年分の放出リスク

    10月 25th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-25

    世界の沼地(ピートランド)は、地球の地表のわずか3 %未満しか占めていないにもかかわらず、世界全土の土壌炭素の30 %以上を貯蔵しています。つまり、沼地は人類にとって“見えない巨大な炭素貯蔵庫”です。
    しかし、その安定が崩れつつあります。最近のPhys.orgの記事によると、極端な乾燥事態が続発した場合、沼地の水位低下と温度上昇が連動し、数百年かけて蓄えられた炭素が数か月で放出される可能性があるといいます。

    「炭素の沈黙」が破られるとき

    通常、沼地の土壌は水に満たされており、有機物が完全に分解されないまま堆積するため、長期的な炭素貯蔵が可能です。しかし乾燥によって酸素が供給されると、微生物活動が活発化し、CO₂が急増します。
    一部の研究では、このプロセスによる炭素放出量が、年間にして産業革命前後の大気CO₂増加量に匹敵する可能性も指摘されています。気候変動の「隠れた増幅装置」と言っても過言ではありません。

    経済的・文化的な損失も

    湿地や沼地の減少は、単に環境問題にとどまりません。最大39 兆ドルにのぼる経済的損失を引き起こすとの試算(Reuters報道)もあり、これはグローバルGDPの数年分に相当します。
    同時に、湿地に根づいた文化的景観、民俗的伝承、利用史といった「湿地文化資源」も失われつつあります。“湿地の記憶”喪失とも言えるでしょう。

    湿地をめぐる新しい研究と創造のタネ

    このニュースから派生する文化資源学・デジタルヒューマニティーズの可能性を、次のように考えます。

    1. 記録保存:湿地・沼地の文化資源をデジタルアーカイブ化し、地形・伝承・利用史をマッピング化。地域史の継承へ。
    2. 消失リスクの可視化:乾燥や気候変化による湿地文化の喪失を追跡し、「失われゆく文化・生態ネットワーク」を視覚的に記録。
    3. 文化経営モデルの創出:湿地ツーリズム×デジタルアーカイブを掛け合わせた地域振興・保全型の文化経営戦略。
    4. デジタルツイン化:衛星やドローンのリアルタイムデータを活用し、湿地の“デジタルツイン”を構築。人文情報学的に文化・生態・歴史を統合。
    5. XR展示:湿地の地形・植生・人文記録をVR/XRで再現し、来訪者が「失われゆく湿地文化」を体験的に学べるデジタル展示。

    これらのアプローチは、「湿地を守ること=文化を守ること」という新たな理解を促します。

    今日のビジネスTips:湿地アーカイブをブランド資源に

    ビジネスの視点からも、湿地の文化資源は新しい価値を生み出せます。
    地方自治体や観光協会向けに「湿地デジタルアーカイブ+観光UX設計+環境監視データ提供」のパッケージを提案し、

    • 有料のデジタルツーリズム、
    • VR体験コンテンツ、
    • 湿地保全ファンド連動型の寄付モデル
      などを組み合わせることで、地域の自然と文化を両立させた収益モデルを構築できます。

    参考情報

    • Phys.org(2025年10月発表)
      https://phys.org/news/2025-10-peatlands-huge-reservoir-carbon.html
    • Reuters(参考報道)
  • 5th DARIAH-HR International Conference「Digital Humanities & Heritage 2025」開幕

    10月 24th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-24

    デジタルヒューマニティーズが描く「記憶の双子」時代へ

    クロアチア・オシエクで、2025年10月22日〜24日にかけて開催中の5th DARIAH-HR International Conference「Digital Humanities & Heritage 2025」は、STEM×人文×アートの連携によって文化遺産を再発見する国際会議です。
    今年のテーマは、デジタル技術で文化記憶をどう再構築するか――つまり「Digital TwinからMemory Twinへ」という新たな挑戦にあります。

    ユネスコ「デジタル文化遺産」チェアのマリノス・イオアニデス氏は、3Dスキャンなどのデジタルツイン技術に物語・記憶の層を重ねる“Memory Twin”概念を提唱しました。物理的な遺物の再現だけでなく、その背景にある人々の記憶・語り・感情をデータとして結び直す構想です。
    一方、AI4LAM事務局長のイネス・ヴォドピベツ氏は、図書館・博物館・アーカイブのデータ統合をAIで推進し、メタデータ定義の再考を呼び掛けました。
    これらの取り組みは、欧州委員会が進めるEuropean Cultural Heritage Cloud構想とも密接に連動しており、文化資源学や人文情報学における最新の国際潮流を示しています。

    日本の文化機関にとっての示唆

    日本でもデジタルアーカイブの整備が進むなか、Memory Twinの考え方は、単なる「再現」から「共感」へと舵を切るヒントを与えてくれます。
    たとえば、博物館の展示物に来館者の語りや記憶を重ねていくことで、地域固有の物語資源を可視化できます。


    創作・研究のタネ

    • 国内博物館所蔵品を3Dスキャン+メタデータ整理し、Memory Twin付きIIIFマニフェストで一般公開。
    • 生成AIでMemory Twinモデルに訪問者の“聞き書き”を即時注入し、展示物と対話できるXRガイドを開発。
    • AIバイアス診断ツールをオープンソース化し、地域史データセットの包摂性を可視化。
    • 生体センサーで来館者の感情データを取得し、展示のMemory Twinがリアルタイム進化する没入型美術館。
    • 沼地をドローンLiDARでデジタルツイン化し、湿地伝承をMemory Twinとして重ねた“エコ×文化”観光ルート。

    今日のビジネスTips

    「Memory Twin CMS」をSaaSで提供し、3Dデジタルツインにストーリー・寄付・NFTを統合する仕組みを考えてみましょう。
    博物館や自治体と収益シェアモデルを組むことで、文化経営のDX化が現実的に進みます。
    デジタル文化資源の持続的活用に向けて、“思い出をデータ化する経営”という視点がこれからの鍵になりそうです。


    参考情報

    • 会期:2025年10月22日〜24日
    • 公式サイト:https://dhh.dariah.hr/
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