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  • シカゴ歴史博物館「Aquí en Chicago」開幕──学生運動が実現させたラテン系市民史展とデジタル・ヒューマニティーズ

    10月 29th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-29

    「自分たちの物語を展示してほしい」──高校生の声が動かした博物館

    2025年10月25日、シカゴ歴史博物館(Chicago History Museum)が公開した新常設展「Aquí en Chicago(ここ、シカゴで)」は、単なる地域史展ではありません。
    この展示の発端は2019年、同館を訪れた高校生たちの
    「館内に自分たちの歴史がない」というSNSでの抗議でした。そこから博物館との対話が始まり、6年の歳月を経て、市民と学生の声が展示を形づくったのです。

    展示は英語とスペイン語の二言語構成。クインセアニェーラのドレス、ボンバ太鼓、タマレ屋のクーラーなど、多数の生活資料が、高校生がつけたラベルとともに並びます。地域の“生きた記憶”をそのまま体験するかのような展示です。

    出典:Chicago History Museum opens “Aquí en Chicago”(Chicago Sun-Times, 2025年10月26日)


    デジタル・ヒューマニティーズが可能にした「市民が綴る展示」

    展示設計には、デジタル・ヒューマニティーズ研究者のジョジョ・ガルバン・モラ(Jojo Galván Mora)が参画。

    「市民が自らの歴史を記録し、公共文化施設を変革できる」という理念を実装した試みであり、博物館の在り方を問い直す実践的モデルといえます。

    会期は2026年11月8日まで。しかし、この展示の真価は「終了後も残るオープンな知識基盤」にあるのかもしれません。


    沼と人を結ぶ「クロノトポス」──展示手法を未来へ拡張する

    注目したいのは、この展示の「参加型・多層的・語りのデザイン」を応用できる可能性です。
    たとえば、「移民史」と「湿地保全」を組み合わせた
    『沼と人のクロノトポス』プロジェクトを構想してみましょう。

    シカゴ河畔の湿地に定住した各国移民の生活史を、

    • 植物標本のDNAメタバーコーディング、
    • 家族写真や口承資料のアーカイブ、
    • GISタイムライン上での視覚化

    などと重ね合わせる。
    来館者はMR(複合現実)ゴーグル越しに過去の風景と家族史を行き来しながら、時系列の“文化生態系マップ”を体験できる。

    このような「場所依存型ヒューマン・エコロジー年表」は、環境教育・エスニック・スタディーズ・アートリサーチを横断する新しい公共学習の装置になり得ます。


    今日のビジネスTips──地域博物館の「XR参加型アーカイブ化」

    「Aquí en Chicago」で用いられた参加型アーカイブ基盤はアナログですが、SaaS型のXRプラットフォームとして展開する構想も興味深いです。
    地域博物館や図書館が月額課金で導入できる「コミュニティ史XRプラットフォーム」を立ち上げるとどうでしょうか。

    来館者が投稿した写真・音声・テキストは、AIによって多言語翻訳・音声合成され、展示端末・スマートフォンの双方で再生可能。
    さらに、投稿コンテンツの閲覧数に応じて寄付ボタンが提示される仕組みを組み合わせれば、

    • 館は展示費用を補填
    • 来館者は社会的貢献を実感
    • 制作会社はテンプレート提供で収益を得る

    という三者メリット型の循環モデルが成立します。
    文化展示が「見る場所」から「参加して育てる場」へ──その流れを技術で後押しする時代が来ています。

  • 極端乾燥が沼地の炭素を「数か月で250年分」放出──Science誌が警鐘

    10月 28th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-28

    以前にも沼ニュースとして取り上げた話題ですが、異なるソースを見つけたので、再度、要約&考察をお届けします。

    「炭素を閉じ込める沼」が、炭素を放つとき

    2025年10月23日付『Science』誌に掲載された、米・コーネル大学らの国際共同研究が世界を驚かせました。
    研究チームは、泥炭湿地──つまり沼地が地球の土壌炭素の30%以上を蓄える「巨大な炭素金庫」であることを再確認しつつも、極端乾燥下でそのバランスが一気に崩れることを実験的に示しました。

    論文によると、高温・高CO₂環境で短期間の乾燥イベントを与えた場合、CO₂放出量が平常時の約3倍に増加。
    わずか数か月で90〜250年分の貯蔵炭素が大気に放出される可能性があると報告されています。
    研究者たちは「今後、干ばつが頻発すれば、湿地は“炭素の貯蔵庫”から“炭素の供給源”に変わる」と警鐘を鳴らしました。

    出典:Peatlands huge reservoir of carbon at risk of release – Cornell Chronicle


    炭素と水のバランスが崩れるとき、微生物が目を覚ます

    泥炭湿地の炭素は、常に水に浸かることで酸素の供給が抑えられ、分解が遅れることによって蓄積されています。
    しかし、水位が下がり乾燥が進むと、好気性微生物が活動を再開し、有機炭素を急速に分解してしまいます。
    つまり「わずかな乾燥」が、「数百年分の炭素損失」を引き起こす引き金になるのです。

    この結果は、温暖化による極端現象の頻度が増す未来を考えると、湿地保全の緊急性を改めて浮き彫りにしています。
    各地域にある“身近な湿地”は、今どんな状態でしょうか?


    沼地を「文化と炭素のアーカイブ」として再発見する

    この研究は、単なる環境問題以上の問いを投げかけます。
    沼や湿地は、炭素を蓄えると同時に、人々の暮らしや信仰、言葉、祭礼を支えてきた文化的な基層でもあります。

    たとえば日本各地の谷津田や高層湿原を対象に、次のような構想を考えてみてはいかがでしょうか。

    • 「湿地デジタルツイン・アーカイブ」構想:
      衛星データやドローンLidarで水位・植生・炭素量をモニタリングしながら、
      地域の祭礼、農法、民話、方言などを動画・音声・テキストで収集。
      それらを IIIF+Linked Data で統合し、炭素変動と文化活動の関係を時系列で可視化。

    このようなアプローチなら、気候変動と文化変容を同時に捉える学際研究が可能になります。
    地域住民がデータ収集に参加すれば、「守る対象」から「共に育てる知の沼地」へと変わっていくでしょう。


    今日のビジネスTips──「Wetland Insight API」の発想

    環境DXと地域経済をつなぐ仕組みも見えてきます。
    たとえば、湿地の炭素量・観光価値・文化的指標をリアルタイムで配信する「Wetland Insight API」を開発し、
    自治体や企業の
    ESGレポート、カーボンクレジット評価、エコツーリズムアプリに提供するビジネスモデルです。

    沼地の保全データが「地域の信用情報」として活用されれば、
    気候変動対策と地域振興を同時に支えるエコシステムが生まれるかもしれません。

    町々に、眠れる“炭素のアーカイブ”があるのではないでしょうか。

  • Europeanaが示す「AI×文化遺産」最前線──AI4Cultureハッカソンが切り拓く“再利用する文化”の未来

    10月 27th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-27

    デジタル文化遺産に「AIの実験場」が誕生

    2025年2月、欧州の文化遺産プラットフォーム Europeana が主導するプロジェクト AI4Culture がハッカソンを開催しました。テーマは「AIツールを使ってデジタル文化遺産データを革新的に変換・研究・展示せよ」。
    参加者には文化機関が保有するデジタル化データやAIツール群、そして教育・スキル向上資料が提供され、5チームが具体的なユースケースを開発しました。

    このイベントは単なる技術コンテストではなく、「AIが文化遺産とどう共創できるか」を探る実践の場でした。

    参照先URL
    https://pro.europeana.eu/post/how-ai-is-transforming-digital-cultural-heritage


    ハッカソンから生まれた5つのプロジェクト

    1. ABC: Automating Blender Code

    2D画像から3Dモデルを生成するAIパイプラインを開発。
    これまで専門的スキルが必要だったBlenderによる3Dモデリング作業を自動化・効率化し、誰でも「文化財の3D再現」に挑戦できる道を開きました。

    2. Patina: de:color of time

    デジタル化作品の経年変化(パティナ)を可視化するツールを構築。
    CNN(畳み込みニューラルネットワーク)で画像を分類し、「作品が時間とともにどう変わるのか」を一般向けに示す試みです。
    ただし、十分な学習データの確保が課題として挙げられました。

    3. DeepCulture

    文化遺産データに対して感情分析(sentiment analysis)を適用。
    作品や記録に内在する「隠れた物語」「人々の感情」を抽出することで、文化資源を“データとして”ではなく“ストーリーとして”再発見するアプローチです。

    4. ArcAIVision

    映像アーカイブをAIで解析し、「移民」などのテーマをメタデータに頼らずに検出。
    BERTopicによるトピックモデリングやK-NNクラスタリングなどを組み合わせ、過去の映像を新しい文脈で再探索する試みです。

    5. Un2Structured

    非構造化PDF(年報・図版集など)から構造化データ(JSON)を自動抽出。
    出所情報や図像学的データを整理し、LLM(大規模言語モデル)を活用したテンプレートプロンプトも実験的に採用しました。


    見えてきた課題と可能性

    これらのプロジェクトが示したのは、AIによって文化遺産データが「読む」「見る」から「変換する・分析する・再利用する」フェーズへ進化しているという現実です。

    一方で、チームからは次のような課題も指摘されています。

    • データ量の不足(Patinaチーム):AIモデルの精度を左右する根本的な問題。
    • メタデータの偏り・限界(ArcAIVisionチーム):人間が付けた分類体系がAIの探索を制約している。

    つまり、AIの活用は単なる技術課題ではなく、文化データの構造と倫理をどう再設計するかという問いでもあります。


    Europeanaが描く「再利用する文化」の未来

    記事全体を通して、Europeanaは「文化遺産を守る」から「文化を再利用し、新しい物語を生む」へというシフトを強調しています。
    その実現には以下の要素が欠かせません。

    • オープンAPI(例:Europeana API)によるデータ共有
    • AIツールと教育資料の整備
    • スキル構築と倫理ガイドラインの策定

    こうした取り組みが整うことで、研究者・クリエイター・市民が文化遺産を“再構築可能な資源”として扱えるようになるのです。
    日本でも、博物館や文書館がAIを通じて「開かれた文化の共創者」として再定義される日が来るかもしれません。

  • 沼妖精file:001 憂鬱の訪れ

    10月 26th, 2025

    今週の沼妖精のささやき 2025-10-26

    憂鬱の訪れ 〜ため息の周波数〜

    「あなたのため息、周波数がいい感じ。サンプリングして曲にしてもいい?」
    ――憂鬱の訪れ

    夜の美術館で、誰もいない展示室にふっと響くため息。
    それを聞きつけてやってくるのが、「憂鬱の訪れ」と呼ばれる妖精です。
    彼(あるいは彼女)は、人の感情が波打つ瞬間の“音”を集めては、静かに体の奥でリミックスしているのだとか。
    藍色の肌を揺らしながら、ため息の湿った響きに耳をすませ、感情の周波数を測定する姿は、少し切なくもあり、美しくもあります。

    人間のため息にも、実際に「周波数」があるといわれます。
    声のトーンや息の長さによって、聴く人の心拍数や脳波にわずかな影響を与えることが研究でも確認されているそうです。
    つまり――ため息は、感情の“音声信号”なのです。
    憂鬱の訪れは、それを「曲」に変える妖精。
    そして私たちは、無意識のうちに、自分の感情を世界に“演奏”している奏者なのかもしれません。

    行動のタネ

    今夜、ひとりで静かにため息をついてみましょう。
    その音を、否定せずに聴いてみるのです。
    長さ、湿り気、リズム。
    それは今日のあなたという“曲”のイントロかもしれません。
    録音してもいいし、ただ耳で感じるだけでも。
    憂鬱の訪れが、どこかでその旋律を拾ってくれるはず。

  • 沼地(ピートランド)が“気候負債”の震源に:極端乾燥で炭素貯蔵数百年分の放出リスク

    10月 25th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-25

    世界の沼地(ピートランド)は、地球の地表のわずか3 %未満しか占めていないにもかかわらず、世界全土の土壌炭素の30 %以上を貯蔵しています。つまり、沼地は人類にとって“見えない巨大な炭素貯蔵庫”です。
    しかし、その安定が崩れつつあります。最近のPhys.orgの記事によると、極端な乾燥事態が続発した場合、沼地の水位低下と温度上昇が連動し、数百年かけて蓄えられた炭素が数か月で放出される可能性があるといいます。

    「炭素の沈黙」が破られるとき

    通常、沼地の土壌は水に満たされており、有機物が完全に分解されないまま堆積するため、長期的な炭素貯蔵が可能です。しかし乾燥によって酸素が供給されると、微生物活動が活発化し、CO₂が急増します。
    一部の研究では、このプロセスによる炭素放出量が、年間にして産業革命前後の大気CO₂増加量に匹敵する可能性も指摘されています。気候変動の「隠れた増幅装置」と言っても過言ではありません。

    経済的・文化的な損失も

    湿地や沼地の減少は、単に環境問題にとどまりません。最大39 兆ドルにのぼる経済的損失を引き起こすとの試算(Reuters報道)もあり、これはグローバルGDPの数年分に相当します。
    同時に、湿地に根づいた文化的景観、民俗的伝承、利用史といった「湿地文化資源」も失われつつあります。“湿地の記憶”喪失とも言えるでしょう。

    湿地をめぐる新しい研究と創造のタネ

    このニュースから派生する文化資源学・デジタルヒューマニティーズの可能性を、次のように考えます。

    1. 記録保存:湿地・沼地の文化資源をデジタルアーカイブ化し、地形・伝承・利用史をマッピング化。地域史の継承へ。
    2. 消失リスクの可視化:乾燥や気候変化による湿地文化の喪失を追跡し、「失われゆく文化・生態ネットワーク」を視覚的に記録。
    3. 文化経営モデルの創出:湿地ツーリズム×デジタルアーカイブを掛け合わせた地域振興・保全型の文化経営戦略。
    4. デジタルツイン化:衛星やドローンのリアルタイムデータを活用し、湿地の“デジタルツイン”を構築。人文情報学的に文化・生態・歴史を統合。
    5. XR展示:湿地の地形・植生・人文記録をVR/XRで再現し、来訪者が「失われゆく湿地文化」を体験的に学べるデジタル展示。

    これらのアプローチは、「湿地を守ること=文化を守ること」という新たな理解を促します。

    今日のビジネスTips:湿地アーカイブをブランド資源に

    ビジネスの視点からも、湿地の文化資源は新しい価値を生み出せます。
    地方自治体や観光協会向けに「湿地デジタルアーカイブ+観光UX設計+環境監視データ提供」のパッケージを提案し、

    • 有料のデジタルツーリズム、
    • VR体験コンテンツ、
    • 湿地保全ファンド連動型の寄付モデル
      などを組み合わせることで、地域の自然と文化を両立させた収益モデルを構築できます。

    参考情報

    • Phys.org(2025年10月発表)
      https://phys.org/news/2025-10-peatlands-huge-reservoir-carbon.html
    • Reuters(参考報道)
  • 5th DARIAH-HR International Conference「Digital Humanities & Heritage 2025」開幕

    10月 24th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-24

    デジタルヒューマニティーズが描く「記憶の双子」時代へ

    クロアチア・オシエクで、2025年10月22日〜24日にかけて開催中の5th DARIAH-HR International Conference「Digital Humanities & Heritage 2025」は、STEM×人文×アートの連携によって文化遺産を再発見する国際会議です。
    今年のテーマは、デジタル技術で文化記憶をどう再構築するか――つまり「Digital TwinからMemory Twinへ」という新たな挑戦にあります。

    ユネスコ「デジタル文化遺産」チェアのマリノス・イオアニデス氏は、3Dスキャンなどのデジタルツイン技術に物語・記憶の層を重ねる“Memory Twin”概念を提唱しました。物理的な遺物の再現だけでなく、その背景にある人々の記憶・語り・感情をデータとして結び直す構想です。
    一方、AI4LAM事務局長のイネス・ヴォドピベツ氏は、図書館・博物館・アーカイブのデータ統合をAIで推進し、メタデータ定義の再考を呼び掛けました。
    これらの取り組みは、欧州委員会が進めるEuropean Cultural Heritage Cloud構想とも密接に連動しており、文化資源学や人文情報学における最新の国際潮流を示しています。

    日本の文化機関にとっての示唆

    日本でもデジタルアーカイブの整備が進むなか、Memory Twinの考え方は、単なる「再現」から「共感」へと舵を切るヒントを与えてくれます。
    たとえば、博物館の展示物に来館者の語りや記憶を重ねていくことで、地域固有の物語資源を可視化できます。


    創作・研究のタネ

    • 国内博物館所蔵品を3Dスキャン+メタデータ整理し、Memory Twin付きIIIFマニフェストで一般公開。
    • 生成AIでMemory Twinモデルに訪問者の“聞き書き”を即時注入し、展示物と対話できるXRガイドを開発。
    • AIバイアス診断ツールをオープンソース化し、地域史データセットの包摂性を可視化。
    • 生体センサーで来館者の感情データを取得し、展示のMemory Twinがリアルタイム進化する没入型美術館。
    • 沼地をドローンLiDARでデジタルツイン化し、湿地伝承をMemory Twinとして重ねた“エコ×文化”観光ルート。

    今日のビジネスTips

    「Memory Twin CMS」をSaaSで提供し、3Dデジタルツインにストーリー・寄付・NFTを統合する仕組みを考えてみましょう。
    博物館や自治体と収益シェアモデルを組むことで、文化経営のDX化が現実的に進みます。
    デジタル文化資源の持続的活用に向けて、“思い出をデータ化する経営”という視点がこれからの鍵になりそうです。


    参考情報

    • 会期:2025年10月22日〜24日
    • 公式サイト:https://dhh.dariah.hr/
  • サウジ発「ArchTech」—AIで古代碑文を多言語デジタルアーカイブ化

    10月 23rd, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-23

    AIが解き明かす古代碑文の新時代

    サウジアラビアの若手考古学者、ハニン・アルザフラニ氏が開発したAI基盤「ArchTech」が注目を集めています。Arab News PKの記事によると、このシステムは高解像度画像から古代タムド文字などを自動解析し、位置情報・素材・年代といったメタデータを統合。さらにアラビア語・英語・中国語・フランス語への即時翻訳も実現しました。

    ArchTechは、文化遺産のデジタルアーカイブ化と観光体験の両立を目指す取り組みで、サウジVision 2030の文化戦略を後押しする重要な試みといえます。

    「空から遺跡へ」—AR観光の新しいかたち

    興味深いのは、同プロジェクトが空路用アプリ「AeroQuest」と連携している点です。利用者は飛行中から史跡データにアクセスし、着陸前にARで仮想遺跡ツアーを体験できます。到着後には実際の遺跡で位置同期した情報を参照でき、まるで碑文が語りかけてくるような没入感が生まれます。

    わたしたちは今後、飛行機の窓から見える地形や遺跡の背後にどんな「物語」が刻まれているのか、リアルタイムで知る時代に入るのかもしれません。

    日本への応用の可能性

    この仕組みを日本の文化資源に応用することはできないでしょうか? 例えば次のような展開が考えられます。

    • 日本の石碑・古墳の拓本をArchTech方式でIIIF連携し、学校教材として公開。
    • マルチモーダルLLMを活用し、碑文ARガイドが訪問者の質問に答える「対話する展示」へ。
    • 沼地・砂丘など風化リスクの高い遺跡をドローンLiDARでスキャンし、ArchTechに自動登録して劣化シミュレーションを共有。
    • NFT+DAOで碑文保全資金をクラウドファンディングし、支援者にはXRレプリカを配布。
    • 碑文内容を生成AIで音楽に音声合成し、現地環境音(沼の水音など)と組み合わせた没入型サウンドツアーを制作。

    これらはいずれも、「文化資源をデータとして残し、体験として再生する」方向を指しています。未来を感じますね。

    今日のビジネスTips

    文化機関向けSaaSの新市場を見逃すな。
    ArchTech型の「AI碑文OCR+自動多言語CMS」を構築し、教育・観光・メタバース向けに二次利用料をレベニューシェアするモデルは、非営利分野でもサステナブルな収益構造を作る可能性があります。

  • Digital Humanities 2025(リスボン) — テーマは「アクセシビリティと市民権」

    10月 22nd, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-22

    オープンアクセスと包摂的設計をめぐる議論

    2025年7月14日から18日にかけて、ポルトガル・リスボンで開催されたDigital Humanities 2025(DH2025)では、「アクセシビリティと市民権(Accessibility and Citizenship)」をテーマに、オープンアクセスや包摂的デザインをめぐる国際的な議論が行われました。

    特に注目を集めたのは、AI利用時のバイアス、障がい者対応、権利処理の課題を取り上げた多国籍パネル。各国の研究者たちは、「研究成果を誰もが再利用できる形で共有する」という理念を共有し、公正なアクセスと技術の倫理的運用を両立する方向性を探りました。

    どんな研究分野で、どんな形で「包摂性」を実現できるでしょうか?


    研究・創作のヒント:アクセシビリティを実装する4つの方向

    1. IIIF・TEIでアクセシブルeBookを自動生成するワークフロー
      標準フォーマットを活用し、古典籍や史料を視覚・聴覚の両面で読める形へ変換する実験的プロジェクト。教育現場でも活用可能です。
    2. 手話アバター+自動字幕を備えた史料閲覧UI
      聴覚障害者が研究成果にアクセスできる環境を整えることで、デジタルヒューマニティーズの裾野が広がります。
    3. “触れるアーカイブ”3Dプリント資料集
      視覚障害者と共同で史料の立体化に取り組むプロジェクト。触覚による理解を促す新しいアプローチです。

    今日のビジネスTips

    文化・教育サイト運営者に向けて、「アクセシビリティ監査+自動修正」をSaaSで提供するビジネスが注目されつつあります。国際基準WCAG 2.2への準拠をワンストップで支援することで、研究機関や自治体のウェブ運用を効率化できます。
    学術リポジトリのリニューアル案件などに組み込むと効果的です。


    参考情報

    • Digital Humanities 2025(2025年7月14–18日, リスボン)
      https://dh2025.adho.org/
  • FROM-GLC Plus 3.0 が日次の世界湿地変化を検出 — AI×衛星×地上カメラで高解像度監視

    10月 21st, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-21

    AI が捉える「湿地の息づかい」

    中国科学院を中心とする研究チームが、FROM-GLC Plus 3.0 を公開しました。
    この新しい地球観測フレームワークは、衛星データ(Sentinel-1/2)と地上カメラ画像を AI で融合。1日単位で湿地の拡大・干上がりを可視化できるようになりました。
    参照元:EurekAlert!

    従来の地球観測では、数週間〜数か月単位での更新が一般的でしたが、FROM-GLC Plus 3.0 は parcel-level(区画単位)解析を導入。AI モデル SAM (Segment Anything Model) を活用し、30m 〜 1m 解像度で欧州などの湿地変化をリアルタイム提供する点が画期的です。

    「今日の湿地はどう変わったのか?」を毎日チェックできる世界が、もう始まりつつあります。


    研究や創作への応用のヒント

    このニュースから感じた創造・研究のタネをいくつか挙げてみます。

    1. 日本の湿地ダッシュボードをつくる

    FROM-GLC データを活用し、日本のラムサール湿地を対象としたモニタリング・ダッシュボードを構築。
    湿地の保全活動に科学的根拠を与えるデータ基盤として注目されそうです。

    2. 歴史との対話:「失われた沼地」を再現する

    AI 解析データと歴史文献を重ね、過去の沼地を時間遷移 CGで再構築する試み。
    地域資料館や環境教育での新たな展示形式になるかもしれません。

    3. 市民参加のローカル FROM-GLC

    市民が撮影したスマホ写真を AI が補完し、地域版の湿地マップを生成。
    参加型の「地球観測文化」として、人文情報学にも広がる可能性があります。


    湿地×テクノロジーの未来を考える

    もし湿地がカーボンクレジットの対象資源として可視化され、
    そのデータを AR マップや NFT と連動させたらどうなるでしょうか?
    保全活動と資金循環がデジタルでつながる仕組みが見えてきます。

    あるいは、音楽や環境音を組み合わせ、湿地のドローン映像をライブ配信するアートイベントを開くのも面白いでしょう。
    「沼 × 音楽」という新しい文化資源のかたちです。


    今日のビジネスTips

    保険・インフラ企業向けに「湿地リスク速報 API」を提供するという発想はどうでしょう。
    AI が解析した湿地の水位や干上がり情報を自動で取り込み、
    災害予測や ESG レポートの生成を効率化できれば、新たな市場価値が生まれます。

    環境モニタリングが「守る」だけでなく、「稼ぐ」仕組みへと進化していく流れを、いまのうちに捉えておきたいところです。


    参考情報

    • 発行:2025年10月(EurekAlert! 掲載)
    • URL:https://www.eurekalert.org/news-releases/1102326
  • 雅楽譜の“断片”がひとつの楽へ——IIIFがひらく音の記憶

    10月 20th, 2025

    今朝の沼ニュース 2025-10-20

    東京大学ヒューマニティーズ・メタデータセンター(HMC)が、TEI2025/DLfM2025で発表した新しい雅楽譜メタデータの取り組みが静かに話題を呼んでいます。
    これまで「巻」単位でしか扱えなかった雅楽譜を、「巻→楽曲→パート譜」という三層構造に再編し、IIIFマニフェストを楽曲単位で生成できるようにしたのだそうです。
    参照:HMC公式ニュース(2025年10月)

    楽曲単位で“聴ける”雅楽譜へ

    これまで断片的にスキャンされていた譜面は、いわば「紙の中の残響」でした。
    HMCの新システムでは、各巻の中から特定の楽曲を抽出し、そのIIIFマニフェストを独立して生成。
    これにより、同じ楽曲の異本(写本の別系統)を並べて比較したり、旋律や記譜法の差異を検索することが可能になりました。

    たとえば「越殿楽」なら、異なる時代・書写者による譜面を画面上で重ね合わせ、細部を拡大して見ることができる。
    音ではなく、“書く”という行為の積層を感じ取る研究が現実味を帯びてきます。

    雅楽という「構造」へのまなざし

    わたしはこの発表を読んでいて、雅楽譜そのものが“データ構造”として見直される瞬間に立ち会っているような感覚を覚えました。
    旋律や拍子よりも先に、情報の“編み方”が見えてくる。
    それは、音を再生するための道具ではなく、音楽を記録しつづけるための文化的記憶装置としての譜面の姿です。

    もしも、IIIF+LOD技術を重ねて、雅楽器の名称や旋律型(旋法)を自動でリンクできるようになれば、「楽曲ナビ」的なサイトが自然に生まれるかもしれません。
    あるいは、生成AIが古譜をMIDI化し、失われた曲を仮想的に復元することも……。
    さらに先には、書き手の筆跡から譜面の系譜を可視化するツールも夢ではないでしょう。

    音が沼のように滲むとき

    雅楽は、音そのものよりも「間」や「空気」を聴く音楽です。
    HMCの研究が示すのは、その“間”の情報化の可能性。
    ひとつの音、一枚の譜面の奥に、千年以上の手の記憶が潜んでいる。

    静かな研究の積み重ねが、いつか水面のように音を映し返す日を、ゆっくりと待ちたいと思います。

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