今朝の沼ニュース 2025-12-12
気候危機の時代に、環境をどう語り、どう理解するか。
その問いに大学教育として本格的に向き合おうという動きが、アメリカ・University of Rhode Island(URI)で始まっています。2025年10月29日、同大学は新たに「Environmental Arts and Humanities(環境アーツ&人文学)」の学士課程を開設すると発表しました。
◆ 環境問題を“文化と物語”から捉える新しい学位
新設されるプログラムは33単位構成で、環境コミュニケーション、歴史、文化、芸術を横断的に学べるのが最大の特徴です。
近年、気候変動や環境正義といった課題は、もはや「科学が示すデータの問題」だけでは語りきれない複雑さを帯びています。
URIの新学位は、自然と人間社会のつながりを、物語・価値観・文化的背景といった“人文学的なレンズ”を通して捉え直すことを目的としています。
◆ なぜ今、“環境 × 人文学”なのか?
環境問題の現場では、「なぜ行動が変わらないのか」「社会はどんな未来を望むのか」といった問いに答える必要があります。これらは科学的データだけでは導けない、人間の心や文化に根付く領域です。
そのため近年、
- 物語(Narratives)
- 芸術表現
- 歴史・文化研究
- 倫理・価値観の探究
といったアプローチを包含する**環境人文学(Environmental Humanities)**が国際的に存在感を高めています。
URIのプログラムは、この潮流を教育制度として具体化した好例といえます。
◆ 専門家育成の新たな地平──社会に必要とされる“語り手”をつくる
今回の動きは、大学教育の中で環境人文学が主流的な学問領域へと成長しつつあることを示しています。
今後は、
- 環境コミュニケーションの専門家
- 文化・歴史の視点から政策に関わる人材
- 気候変動を芸術・表現で伝えるクリエイター
など、多様なキャリアが広がる可能性があります。
科学が示す事実を“どう語るか”が問われる時代、環境+人文学の視点を持つ人材の価値はますます高まるでしょう。
◆ まとめ:環境教育の新たなスタンダードをつくる一歩に
URIの「Environmental Arts and Humanities」学位は、環境教育に価値・意味・物語・文化といった人文学的な問いを本格的に取り入れる転換点となり得ます。
科学だけでは掬いきれない「人間の側の物語」に焦点を当てることは、持続可能な未来を描くうえで欠かせない視点になりそうです。