今朝の沼ニュース 2025-11-8
「Why Preserve?」——世界が一斉に考える保存の理由
2025年11月6日、世界各地でWorld Digital Preservation Day(WDPD)が開催されました。今年のテーマは「Why Preserve?(なぜ保存するのか)」。
主催するDigital Preservation Coalition(dpconline.org)は、デジタル文化遺産をめぐる「保存の意味」を改めて問う日として位置づけています。
この日は、図書館・アーカイブ・博物館・大学などの研究機関、そして企業・市民団体までが、自分たちのデジタル資産をどのように、なぜ残すのかを再考する機会です。
特に注目されたのが、ボーンデジタル資料(born-digital)の保存。フォーマットやメタデータ、アクセス権の制御など、紙資料以上に複雑な条件を持つため、単なる「バックアップ」では済まされません。
デジタル保存は、「未来に向けた戦略的な行為」へと進化しています。組織は、何を、どのように残していくべきでしょうか?
研究の現場で深めたい「未来志向の保存」の視点
「なぜ保存するのか?」という問いは、デジタル保存の技術論に終始せず、創造的なリサーチの起点になり得るはずです。
大学や研究機関の現場こそ、この問いを「未来の再活用」という視点から掘り下げることが強く望まれます。
例えば、地域の口承記録や講義動画といったデジタル資料を管理する中で、「これらのデータは、50年後の研究者にとってどのような意味を持つか?」という問いを常に中心に置くべきです。
この視点を持つことで、単なるバックアップを超え、未来のAIによる創造的な再利用を可能にするためのメタデータ設計やアクセス層の仕組みを戦略的に検討する機会が生まれます。デジタル保存は、過去を守る行為であると同時に、未来の研究可能性をデザインする戦略的な行為へと進化させるべきなのです。
この「未来から過去を見つめる」視点こそが、「なぜ保存するのか?」という抽象的な問いを、実践的かつ創造的なリサーチへと変える鍵となります。
ビジネスの観点から見た「保存戦略」
文化資源やデジタルアーカイブに関わる企業・団体にとっても、WDPDは見逃せません。
「Why Preserve?」というテーマを切り口に、以下のような展開が考えられます。
- 組織向けデジタル保存ワークショップの開催
- 「保存から活用へ」を掲げたコンサルティング・サービス
- メタデータ設計・AI活用支援の新規パッケージ
こうした提案を通じて、「データを残す」から「価値を継承する」へ。
保存をビジネス価値に変える発想が、今まさに求められています。
組織にとっての「Why Preserve?」
もし今日、手元にある資料が50年後に再び人を救うとしたら、どんな仕組みで残しておきたいと思いますか?
デジタル遺産の保存は、技術の問題であると同時に、「未来への責任」そのものなのかもしれません。