今朝の沼ニュース 2026-01-19
国立公園というと絶景や動物に目が行きがちですが、もう一つの主役が「文化資源」——歴史的建造物や遺跡、文化的景観、そして部族との関係づくりです。米国国立公園局(NPS)は、2025年度「自然・文化資源ディレクター賞(Director’s Awards for Natural and Cultural Resources)」を発表し、文化資源の保全・管理で突出した仕事をした職員や取り組みを表彰しました。受賞者の仕事をのぞくと、文化資源管理(CRM)の“実装力”がよく見えてきます。
「表彰」が示すのは、文化資源管理は“日々の積み重ね”だということ
NPSによると、この賞は日常業務を超えて問題解決や新しい機会づくりに取り組んだ職員を称えるもの。2024年の仕事が対象で、受賞者は2025年のNational Service Awards Ceremonyで顕彰される予定です。つまりこれは「派手な成果」だけでなく、現場の地道な判断や段取り、合意形成まで含めた“総合点”の評価なんですね。
歴史的構造物を“使える形で残す”——セーラムの埠頭修復(スーパーバイザー部門)
文化資源部門の受賞カテゴリは大きく3つ(公園管理職/施設メンテ/文化資源スペシャリスト)で、まず「公園管理職(スーパーバイザー)」枠では、セーラム海事国定史跡のスーパーバイザー、ジェニファー・ハーディン氏が受賞。ポイントは、ダービー・ワーフ(歴史的な半マイルの埠頭)の修復が、単なる“見た目の保存”ではなく、強まる嵐や高潮への耐性、来訪者の安全、さらに地下の考古学的遺存物の保護までを一体で扱ったことです。
加えて、コンプライアンスとパブリック・アウトリーチを横断して進めた点が評価されています。文化資源管理の現場感として、ここがめちゃくちゃ大事です。「守る」だけでなく「開く(公開・利用)」ための設計が問われますから。
保存技術×当事者性×部族連携——アドービー保全と“信頼のインフラ”づくり
施設メンテ部門では、カサ・グランデ遺跡国定公園の歴史保存メンテナンス職員、ハンター・ニッシュ氏が受賞。モンスーンの豪雨で壁面崩落の危機があるなか、オリジナルの素材(ファブリック)を守る処置を実務で積み上げたことが評価されています。さらにニッシュ氏は関連部族であるジラ・リバー・インディアン・コミュニティのメンバーで、伝統文化の知識を保全に持ち込み、コミュニティ内での保全イベントも企画しています。技術と社会がくっついている好例です。
そして文化資源スペシャリスト部門では、北東地域の先住民関係(Native Affairs)を担うアシーナ・ジッシス氏が受賞。GAOA(Great American Outdoors Act)関連の大型プロジェクトで必要になる複雑な手続きを進めつつ、主権主体としての部族との、定期的で信頼にもとづく関係づくりを押し進めた点が強調されています。THPO(部族歴史保存担当)との定例ミーティング設定や、部族モニター/専門人材の育成につながる研修の仕組みづくりなど、まさに“文化資源を守るための運用インフラ”を整える仕事です。
まとめ
今回のNPSの表彰は、文化資源管理が「遺跡を掘る/建物を直す」といった単発作業ではなく、気候リスクへの対応、素材の保存科学、来訪者の安全、そして部族との信頼関係までを束ねる“実践知”だと教えてくれます。制度や理念の議論も大事ですが、こうした受賞事例は、文化資源学にとっての「現場の教科書」そのもの。次に公園を訪れるとき、足元や建物の向こう側にいる“裏方ヒーロー”の仕事も、ちょっと思い出したくなります。